歌舞伎は男の世界!男性が演じる「女形」とは

歌舞伎というと、「女形」という言葉を聞いたことがありませんか?
「確か、歌舞伎は男の世界。俳優は全員男性だと聞いたけど、どういうこと?」
今回は、歌舞伎観劇で欠かせない知識の一つ、「女形」についてのお話です。
今を輝く人気女形俳優や、今後注目すべき若手女形俳優もご紹介しますので、
是非、演目選びの参考にしてみて下さい。
何と読む?歌舞伎の「女形」
「女方・女形」と書いて「おんながた」または「おやま」と読みます。
女形は、歌舞伎において、「女性の役」
または「女性役を演じる役者」のことを指します。
本来は、「女性を演じる役割」という意味なので、
表記は「女形」ではなく「女方」だそうです。
歌舞伎の醍醐味!女性らしさを体現する「女形」とは
「女形」は、男性が思う「理想の女性像」として創られた為、
現実世界では会うことが出来ない、舞台上だけの存在とも言えるでしょう。
「○○らしさ」が大事な歌舞伎では、
女性の身のこなしや歩き方、言葉遣い等、
男性が「女らしさ」を表現する為に、
長い年月をかけて、技術が構築されてきました。
ちなみに、「男性の役」または「男性役を演じる役者」を
「立役(たちやく)」と言います。
女優の代わり!?男性が女役を演じる理由
現在は男性俳優が演じる「女形」ですが、
始めは女性が演じていたそうです。
「女形」の基礎が確立されたのは、江戸時代まで遡ります。
当時の幕府は、遊女が舞台上に立つこともあった為、
女性が舞台にあがることは「風紀を乱す」と考え、
禁止令を出しました。
女性の「出雲阿国(いずものおくに)」が起源である歌舞伎ですが、
それ以来、女優の代わりに成人男性が女役を演じる「女形」が誕生しました。
また、「女形」の規範となった二人の俳優「芳沢 あやめ」「瀬川 菊之丞」は、
より「女らしさ」を表現する為に、
日常生活も女性のように暮らしたと言われています。
顔立ちで決める?歌舞伎俳優が女形になるには
「女形」「立役」どちらを演じるか。
それは、生まれた家によって決まるそうです。
とは言っても、本人の希望で「女形」または「立役」を選択し、
演じることもあるとのこと。
また、中には作品によってどちらも演じる俳優もいらっしゃいます。
何度か足を運び、同じ俳優の「女形」と「立役」
どちらも見比べるというのも面白そうです!
どんな人がいるの?有名な女形歌舞伎俳優
五代目 坂東 玉三郎(ばんどう たまさぶろう)
人間国宝にも認定され、現在の女形で最高峰と言われています。
五代目 坂東 玉三郎さんは、梨園出身ではなく、
東京にある料亭の息子として生まれました。
幼い頃に小児麻痺を患った為、リハビリとして舞踊を習い始めたことをきっかけに、
十四代目 守田勘彌の養子となり、14歳で五代目坂東 玉三郎を襲名することになりました。
現在も歌舞伎公演に出演しながら、女形後継者への指導も力を入れているそうです。
五代目 尾上 菊之助(おのえ きくのすけ)
父親は人間国宝の七代目 尾上 菊五郎、母親は女優の富司純子さん、
姉は女優の寺島しのぶさんという、芸能一家で生まれ育ち、
2000年には、「源氏物語」の「紫の上」を演じたことで、大人気になりました。
昨年2019年には、ジブリ作品「風の谷のナウシカ」を歌舞伎で上演し、
主人公ナウシカを演じられたことでも有名です。
また、五代目 尾上 菊之助さんは、女形だけでなく、
二枚目俳優としても活躍されています。
二代目 中村 七之助(なかむら しちのすけ)
歌舞伎の舞台のみでなく、テレビや映画の出演も多くされていますので、
名前を聞いたことがある方も多いと思います。
父親は十八代目 中村 勘三郎、兄は六代目 中村 勘九郎で、
父親の芸をしっかりと受け継いだ、切れの良い演技が評価されています。
「目標は五代目 坂東 玉三郎さんである」
と仰っているように、その坂東さんが今後期待する、
女形俳優の一人とも言われています。
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