歌舞伎の象徴「隈取」って何?

歌舞伎の象徴「隈取」って何?

歌舞伎と聞いて
誰でも思いつくのは
「白塗りに赤や青の線で
描かれた、あの険しい顔」
ではないでしょうか?

今回はこの
「隈取(くまどり)」
と言われる、
歌舞伎独特のお化粧について
ご紹介します!

どうやら
派手な衣装に合わせたメイク
という訳でもなさそう…

歌舞伎観劇の前に
知って得する知識ですので
是非、最後まで読んで行って下さいね!

「隈取(くまどり)」って何?

まず、隈取とは
歌舞伎独特のお化粧法のことで
初代 市川 團十郎さんが
薄暗い芝居小屋の中で
舞台から遠い座席の
観客にも、役者の表情が
見易い様に
紅と墨を用いてお化粧したことが
始まりと言われています。

当時は、今のように
スクリーンや照明の技術が
発展していなかった為、
お化粧で工夫していたそうです。

また、「隈取(くまどり)」は
現在、「時代物」と言われる
演目にて用いられているので
直接見たい方は、観劇の際、
「時代物」を選んで下さいね!

さて、この「隈取」には
歌舞伎の演目において
どのような意味があるのでしょうか。

「隈取」で人物設定や感情が分かる!

歌舞伎を象徴するこの
「隈取」ですが、
ただ観客にインパクトを与えることが
目的という訳ではありません。

これは、赤や青の線で
顔の筋肉や血管を強調
人物の役柄や感情を
表現しているんだそうです。

その為、
実は「隈取」と言っても
赤や青色だけでなく、
役柄によって使われる
色も異なるのです。

「隈取」の色による役柄の違い

「隈取」では、主に赤・青・茶の3色
用いてキャラクター分けされています。

赤:正義のヒーロー的存在

赤色の「隈取」は、
主に善の象徴であり、
強さや勇気を表す
正義の味方キャラです。

よく考えてみると
子供向けの○○レンジャー
なんて言う
戦隊ものシリーズも
主人公の色は
やはり、だったりしますよね。
そういった正義の象徴は
昔も今も変わらない
ということでしょうか。

青:邪悪な悪者キャラ

青色の「隈取」は、
冷酷さや悪い感情を
表現する悪役を意味します。
“人間らしさがない悪人には
赤い血ではなく、
青い血が流れている”
と言われたことから、
青色の「隈取」をすることに
なったようです。

また、演目の中で
藍色の「隈取」を見かけたら
その役は、悪役の中でも
身分の高い悪役という
ことだそうですよ。

茶:魔物や妖怪など人間以外の者

茶色の「隈取」は、
人間ではない魔物や動物、
妖怪等を表しているとのこと。
得体の知れない不気味さを
茶色を用いて
表現しているんだそうです。

代表的な「隈取」の種類

「隈取」は3色の異なる
色を用いてキャラクターを
識別していることが分かりました。

でも実は、色だけでなく
その模様の種類も
約50種類以上存在すると
言われているんです!

代表的な隈取7種類

①むきみの隈
目尻と目頭からそれぞれ
眉毛に向かって上方向縦に
を入れています。
その形が「ハマグリのむき身」
に似ている為、
この名前が付いたんだとか。

この「隈取」は、
「若くてイケメン!
その上、色気もあって
正義感ある人気者」
といったような
役柄を表しているそうです。


②筋隈(すじくま)
鼻筋、額、顔の両側を
赤色で隈取し、
顎も赤く三角に
塗っています。
眉毛は外に跳ねる様に
黒く塗り
力強さや激しい怒りを
表現しているそうです。

これは、「超人的な強さを
発揮する正義の味方」に
使われているとのこと。


③一本隈(いっぽんぐま)
額の両脇から目尻の横、
そして頬にかけて
一本の筋を取る「隈取」で、
「やんちゃなキャラクター」
に用いられています。


④二本隈(にほんぐま)
一本隈と同位置に
二本線を入れることから
二本隈と呼ばれています。
赤色の「隈取」なので
正義や力強さを
象徴することに変わりは
ありませんが、
「むきみ隈」と比べて
どちらかというと
「大人びていて落ち着きがあり、
堂々と肝の座った器の大きな人物」
という感じだそうです。


⑤公家荒れ(くげあれ)
これは、青い「隈取」
眉ははっきりと濃く、
顎には丸くなった隈を取ります。
「ぼかし」という技術を使って
不気味さを表す為の工夫を伴う
「天下を狙う大悪人」の
「隈取」だそうですよ。


⑥変化隈(へんげぐま)
茶色の「隈取」なので
人間以外の役柄に
使用される「隈取」ですね。
その名の通り、人間が
妖怪や鬼に変化する
この「隈取」になるそうです。
模様は様々で、
大きく口が裂けていたり
角が生えている様に
表現されるそうです。


⑦戯隈(ざれぐま)
この「隈取」は動物や植物を
基にしているのですが、
なんと赤色の「隈取」なんです!
赤色と言えば正義の味方…
つまり人間という意味でしたね?

戯隈は「ユーモラスな敵役」に
使われる「隈取」なんだとか。
いくつか種類があり、
猿・ナマズ・コウモリ等が
あるそうです。

まとめ

いくつか紹介しましたが、馴染みのある隈取は
ありましたか?
こんなにパターンがあるなんて
是非、舞台を観に行って
直接目の当たりにしてみたいですね!