歌舞伎文字「勘亭流」って何?文字に込められた思いとは

突然ですが、皆さんは
歌舞伎の看板や番付で使われている
特殊な書体の文字を見たことがありますか?
書道のようで、太くうねりのある
「歌舞伎文字」と言われるこの文字ですが
なぜ、歌舞伎で用いられるように
なったのでしょうか。
今日は、文字から観た歌舞伎を紹介します。
演劇だけでなく、違う角度から掘り下げると
新たな発見があるかも知れません。
歌舞伎文字 勘亭流(かんていりゅう)とは
実は「勘亭流(かんていりゅう)」
という呼び名は通称で
正式名称は「芝居文字(しばいもじ)」と言います。
江戸時代中期(1779年)に
御家流書家の岡崎屋勘六が、
九代目 中村 勘三郎に依頼され、
中村座「御贔屓年々曽我(ごひいきねんねんそが)」
の看板に筆を執ったことが始まりだと言われています。
この特殊な書体の「勘亭流」は世に流行し、
江戸歌舞伎の全盛期には、江戸中の劇場で用いられ、
歌舞伎にはかかせないものとなりました。
「勘亭流」が使われたのは、
台本や俳優の楽屋表示を始めとし、
芝居小屋の看板や街頭の宣伝物である
番付(ポスター)だったそうです。
さて、この特徴的な「勘亭流」ですが
なぜ今日までも、使われるようになったのでしょうか。
歌舞伎文字は縁起が良い!?
この「勘亭流」の書体には
文字に隙間をなくす=客席に隙がないように
文字に丸みをもたせ尖らせない=興行の無事円満を祈る
内側にハネル=お客様を芝居小屋に招き入れる
というような意味が込められています。
この特殊な書体の文字を使って、
人々を歌舞伎の世界へ導いていたのですね。
また、浅草の清光寺には岡崎屋勘六のお墓があり、
墓石裏面には
ありがたや 心の雲の晴れ渡り 只一筋に向かう極楽
と、「勘亭流」で刻まれているそうですよ。
歌舞伎文字として親しまれている
「勘亭流」の他にも、
提灯や相撲など、日常生活の中で
似たような特徴の文字を見たことがありませんか?
「勘亭流」は江戸文字の仲間
実はこの「勘亭流(芝居文字)」は、
江戸文字と言われる数種類の書体の1つなのです。
さて、この江戸文字には
他にどのような書体があるのでしょうか。
それぞれの名称と特徴を紹介します。
寄席文字(よせもじ)
通称:橘流(たちばなりゅう)
客を寄せるための書体で
「客が集まるように」と縁起をかついで、
字が詰まり加減になっているのが特徴です。
落語の看板や番付、ビラなどで使用されています。
籠文字(かごもじ)
字画が厚く、やや四角い書体です。
反転文字や輪郭線として
使われることがあるそうです。
また、籠文字は基本的には
千社札(せんじゃふだ)に
使用される書体なんだとか。
※千社札(せんじゃふだ)とは
神社や仏閣に参拝を行った記念として貼るもので、
自分の名前や住所を書き込んだ札のことです。
髭文字(ひげもじ)
文字に「髭」がついている書体。
実は、浅草寺の入り口にある大提灯の文字は
この髭文字なんだそうですよ。
相撲字(すもうじ)
通称:根岸流(ねぎしりゅう)
大相撲の番付や広告などに使われる書体です。
提灯文字(ちょうちんもじ)
提灯文字は、毛筆の楷書を太く
肉付けした書体なので、
一筆では描けないのが特徴です。
始めに輪郭を描き、その中を
何度も塗りこむ方法で書かれる書体なのです。
お祭りで見る提灯には
この提灯文字が使われていると思いがちですが
提灯の依頼主によって書体が異なるので
一概にそうとは言えません。
角字(かくじ)
極太の四角い書体で
よく知るところでは印鑑に使用されています。
楷書体や、漢字そのものを
角字と言うこともあるそうです。
まとめ
歌
舞伎文字と言われる「勘亭流」以外にも
江戸時代から、発展を遂げてきた
それぞれの江戸文字には、
まだまだ深い歴史がありそうです。
この機会に、歌舞伎文字や江戸文字の成り立ちを
調べてみるのもおもしろそうですね!
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