歌舞伎のかつら|髪型だけで役柄を見分けられる!?

歌舞伎の舞台衣装には
女形(女性役)が着る
着物や裲襠(うちかけ)などの、
色鮮やかさが目を引くものや
仕掛けが施されたものがあります。
では、歌舞伎役者の髪型に
注目したことはありますか?
実は、役者の服装だけでなく
髪型にもそれぞれ特徴があり、
その役柄を見分けることができるんです。
歌舞伎の髪型について
歌舞伎の髪型(かつら)には、
役ごとに細かな決まりがあり、
その種類も、1000以上あるそうです。
演目の舞台となる時代に沿った
髪型にしていることもありますが
歌舞伎ならではの、
大胆なアレンジを加えた髪型も多くあります。
髪型を見て役の何がわかるの?
歌舞伎の髪型からは、
主に以下の内容が読み取れます。
- 年齢
- 身分
- 職業
- 性格
これらの知識があると
何度も歌舞伎を観るうちに
「あの人は遊女の中でも格の高い人だ!」
「あの男性は、正義感の強い壮年の男性だ。」
などと、その役柄について
より詳しく情報を汲み取ることが
できるようになります。
また、歌舞伎のかつらは
演目と配役が決まってから
専門の職人によって、
公演ごとに作られているそうです。
歌舞伎俳優の好みやお家の芸風に
合わせて作るため、こんなにたくさんの役が
あるにも拘わらず、かつらの作り置きはしません。
ちなみにかつらの素材は主に人毛です。
では、初めて歌舞伎を観る際、
髪型のどのような部分を
意識して観ればよいのでしょうか?
歌舞伎における髪型の見方
髪型の注目すべき4つのポイントは
こちらです。
①まげ(髷)
時代劇で見る「ちょんまげ」を
想像してみて下さい。
「まげ」は、頭のてっぺんにある部分で、
元結(もとゆい)と呼ばれる紐で
髪を1つにまとめて
形を作っている部分のことです。
「まげ」には、それぞれ異なった
形や太さがあるだけでなく、
役によって「まげ」の根元の高さや
折れ曲がっている部分の角度にも、
細かな決まりがあります。
②たぼ(髱)
後頭部の下の方に張りだした部分のことです。
あまり目立たない部分ですが、
歌舞伎の髪型(かつら)では、
重要な意味を持っています。
男性よりも女性の髪型を見ると
分かりやすいです。
③びん(鬢)
頭の左右側面から後ろに向かって
結われる部分のことです。
フワッとさせるか、ピタッとさせるか、
「びん」の張り具合や長さ・形など、
役の決まりに従いながら、
俳優の顔立ちとのバランスに合わせて
髪型(かつら)の形が作られているそうです。
④前髪
立役(男性役)の場合に
前髪があるのは元服前の若者、
つまり成人前の男子ということを
頭に入れておくと、観劇の際に役立ちます!
では、立役(男性役)と女形(女性役)に分けて
それぞれ髪型の違いを見ていきましょう。
立役(男性役)の髪型
歌舞伎は男性中心の社会であった
江戸時代に発展したため、
演目の内容も、男性が社会と葛藤しながら
生きていくものが多いのです。
そういった演目の中で、
役柄一人ひとりの性格や境遇を
細かく表すために、なんと役柄の数だけ
髪型(かつら)があると言われる程、
多様な種類があるんだそうです。
男性のたぼ(髱)
「まげ」の太さや形の違いに加えて、
歌舞伎初心者でも比較的
見分けやすい部分は「たぼ」です。
男性の「たぼ」には後頭部の髪を
油で平らに固めた
「油付(あぶらつき)」と、
髪をふくらませた
「袋付(ふくろつき)」があります。
「油付」は侍役、「袋付」は町人役で
使われることが多いようです。
男性の前髪
また、前髪については先述した通り、
男性で前髪があるのは
未成年という意味ですので、
舞台上で、「前髪と袋付がある男性役」がいたら、
彼は、「未成年の町人」なんだ
ということがわかりますね。
女形(女性役)の髪型
男性の髪型は、役柄の境遇や性格を
表現する意味合いが強いのに対して、
女性の髪型は、その美しさに重点が
置かれています。
さて、そんな女性の髪型で注目すべきは
「まげ(髷)」と「たぼ(髱)」です。
女性のまげ(髷)
「まげ」は、男性の髪型だけにあるもの
だと思っていませんか?
実は女性の髪型にも「まげ」があり、
女形だけでも30種類程あるのです。
場所は男性と同じく頭のてっぺんで、
男性の「まげ」が細長く形作られているのに対して
女性の「まげ」は、フワッと丸みを帯びています。
現代風に表現すると
「髪を盛っている」という状態に近いです。
女性の「まげ」部分には
髪飾りをつけていることが多く、
使用する髪飾りによって
既婚or独身、身分や年齢がわかります。
女性のたぼ(髱)
次に「たぼ」ですが、
男性と同じく2種類に分かれていて、
時代物の演目では「丸たぼ」
世話物の演目では「地たぼ」
と言われる形を使用する様、
決まっています。
初めての観劇でこれらを見分けるのは
難しいと言われていますが、
知識として知っておきましょう。
時代物・世話物など、
歌舞伎演目の種類については
こちらの記事が参考になります。
まとめ
今回は、髪型1つで
こんなに多くの情報が得られる
ということを学びました。
以前紹介した「舞台衣装」や
歌舞伎メイクと言われる「隈取(くまどり)」
の知識と併せて覚えておくと、
より一層役柄を理解することができます。
細かい知識を覚えて
是非、歌舞伎鑑賞で活かしましょう!
歌舞伎の舞台衣装や隈取については
こちらの記事も是非!
◆華やかな世界!歌舞伎の舞台衣装
◆歌舞伎の象徴「隈取」って何?
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