長唄とは?「勧進帳」から学ぶ歌舞伎の音楽

歌舞伎を観劇するにあたって
知っておくべき要素の1つは音楽です。
どの演目でも、歌舞伎には
音楽が欠かせません。
今日は、歌舞伎の有名な演目である
「勧進帳」を通して、歌舞伎の音楽
について紹介します。
そういえば、中学校の音楽の授業で
習ったかもしれない…と、
うっすら記憶がある方は、
ラッキーです!
一度忘れた記憶は、思い出すと
それ以降忘れにくくなるらしいですよ!
是非、最後まで読んで記憶を
呼び起こして下さい。
歌舞伎を構成する3つの要素
歌舞伎は文字通り、
歌=音楽
舞=踊り
伎=演技
上記3つの要素で成り立っています。
歌舞伎の音楽に使われる
主な楽器の種類はこちらです。
- 三味線
- 笛
- 大太鼓
- 大鼓
- 小鼓
- 締太鼓
- 鉦(かね)
- ツケ木とツケ板
- 柝(き)
また、歌舞伎の音楽には、
いくつかの種類があり、
三味線に合わせてナレーションをする
義太夫節(ぎだゆうぶし)
メロディーに乗せて唄う
長唄(ながうた)
観客に顔を出してする演奏を、
出囃子(でばやし)や
出語り(でがたり)と言います。
歌舞伎に使われる
音楽の種類について詳しく
知りたい方は
こちらの記事が参考になります。
歌舞伎唄って何?音楽による演出方法
長唄(ながうた)について解説
正式名称は江戸長唄。
この長唄は、18世紀初期に
歌舞伎舞踊の伴奏音楽として誕生し、
歌舞伎と共に発展してきた
三味線音楽の1つです。
基本的には、複数人の唄と
三味線で成り立っていて、
唄を担当する唄方と、
三味線を担当する三味線方が
存在します。
曲目によっては、
先述した楽器が加わることも
あるそうです。
また、使用する三味線は
細棹(ほそざお)と呼ばれるもので
繊細なメロディーを演奏するのに
適していると言われています。
「勧進帳」のあらすじ
さて、そもそも「勧進帳」とは
どのような内容の演目なのでしょうか。
ここで、簡単にご説明します。
<主な登場人物3名>
- 源義経
- 義経に使える武蔵坊弁慶
- 関所の役人である冨樫
兄・源頼朝に追われて、
仏教の修行者や荷物持ちに
変装をして身を隠しながら、
京の都から東北へ逃げて来ました。
しかし、ある関所で冨樫という役人に
「もしかして…
義経がいるのではないか?」
と足止めを喰らいます。
そこで弁慶は、
「寺の修復をするため、日本中を回り
寄付を募っている。」
と、咄嗟にウソをついて
関所を通過しようとしますが
頭の切れる冨樫は
「では、勧進帳を見せてみよ。」
と、弁慶に迫ります。
※勧進帳とは、
寄付の目的や寄付してくれた人の
名前などが書かれたもので
関所を通過する際の
通行証にもなります。
そこで弁慶は、たまたま手元にあった
まっさらな巻物を手にして、
まるで本物の勧進帳のように
読み上げ、冨樫からの質問にも
スラスラと答えます。
結局、冨樫には
そこに義経がいることは
ばれているのですが、
必死になって、主君義経を
守ろうとする弁慶の姿勢に感銘を受け
一行を通関させる…
というお話です。
「勧進帳」の長唄は見どころ!
ここで、歌舞伎十八番「勧進帳」で
義経が花道に出てくる際の
長唄の歌詞を紹介します。
これやこの
往くもかえるも別れては
知るも知らぬも
逢坂の山かくすす
霞ぞ春はゆかしける
波路はるかに行く船の
海津の浦に着きにけり
【歌詞の意味】
「これやこの〜」と、
古い歌に詠まれた
逢坂の山を超えてきたが、
振り返っても霞に隠れて
観ることができない。
霞が春の気配を感じさせ
ことさら都の春が懐かしく思われる。
義経一行は船で琵琶湖を渡り
海津の浦に着いたのであった。
「勧進帳」の滝流し
「勧進帳」の後半に
このようなシーンがあります。
弁慶の機転を褒めて喜びます。
そこへ、関所の冨樫が追いかけてきて
「疑って悪かった」
と酒を振舞います。
お礼に弁慶が舞を披露している間に、
義経と家来たちを先に立たせ、
自分も後を追って行く…
という場面なのですが、
弁慶が踊る「延年の舞」では
滝が流れるように
唄と音楽が切れ間なく流れ続けます。
これが滝流しと呼ばれる
「勧進帳」の見せ場なのです。
まとめ
ドラマやアニメにも
効果音やBGMがあるように、
場面の雰囲気や登場人物の
心情を表現するために
歌舞伎の演目でも音楽は必要不可欠です。
音楽は、演目を楽しむポイントの
1つでもありますので
是非、意識して耳を傾けてみて下さいね。
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