殺陣がなければ始まらない!歌舞伎の戦闘シーン

殺陣がなければ始まらない!歌舞伎の戦闘シーン
歌舞伎に戦闘シーン!?

とタイトルを見て驚いた方も多いのではないでしょうか。

音楽的要素が多そう、
という印象の歌舞伎ですが、
実は、歌舞伎観劇で見どころの
1つは戦闘シーン
なんです!

そこで今回は、歌舞伎における
「殺陣」について紹介します。
観劇の演目選びにも使える知識なので
是非、最後までお目通し下さい。

そもそも殺陣って何?

日本刀で斬り合うなどの
闘争演技の型の総称で、
殺陣とかいて「たて」と読みます。

言葉の由来は諸説あり
歌舞伎の「立廻り」を略して
「立ち」
と呼んでいたことが
関係しているというのが
一般的に知られています。

そのため、歌舞伎では
「殺陣」ではなく「立て」
という字を当てています。


他には、刀を意味する
「太刀(たち)」や、
目立つように「立てる」という
意味合いが変化した

という説もあるそうです。

また、なぜ一般的に
「殺陣」という漢字が
使われているのかと言うと、
かつて「殺人」という演目を
考案した人が「殺陣」の方が良いと
変更したことから、「殺陣」
という漢字が使われるように
なったんだそうです。

立廻り(立回り)と殺陣の違い

「殺陣」が闘争演技の型の総称
であることに対して、
演劇や映画の世界では、
大人数で斬り合ったり
格闘する場面の演技や演出のこと
立廻り(たちまわり)と言います。

時代劇やアクション映画では
大人数が刀で斬り合うなんて
かなり生々しいシーンに
なることが多いのですが、
歌舞伎では、ちょっと違います


歌舞伎は、様式美を見せる
舞踊的な要素が大切にされているので
リアルな格闘シーンを魅せるのではなく
登場人物が音楽にのって様式的に動くことで
表現するのです。


また、歌舞伎の立廻りは
1人の人物に大勢で挑みかかるというのが
基本ですが、この立廻りに参加する人数も
演目によって異なります。

ゆっくりとした三味線の演奏に乗って
舞うように演じるというのも
歌舞伎の立廻りとしての特徴
です。

立廻りのシーンでは
三味線だけでなく、ツケが打たれたり、
見得を切ったり、宙返りをしたりと
バラエティー豊富な演出は、
同じ演目でも、上演の都度
変更することもあるそうです。

ツケって何?と思った方は
こちらの記事が参考になります!
歌舞伎唄って何?音楽による演出方法


さらに、大人数での激しい乱闘シーンは
「大立廻り(おおたちまわり)」
といって、クライマックスで
使われることが多い演出なんだとか。

歌舞伎における殺陣の基本型

歌舞伎における立廻りシーンは、
演目ごとに立師(たてし)たちによって
いくつかの型を組み合わせて考案されています。

構成された形式は、200種にも及ぶほど!

では、その中でも基本的な
殺陣の型5つを紹介します。

  1. 山形
    日本刀を振りおろして斬り結ぶ型

  2. 打ってかかるのを斜めにかわす型
  3. 天地
    日本刀の斬り合いで上下に払う型
  4. 千鳥
    主役が挑みかかってくる
    大勢の軍兵や捕り手を
    左右へ交互に払い入れる型
  5. とんぼ
    大勢の軍兵や捕り手たちが
    主役に払われ宙返りする型

立廻りを観るにはどの作品を選ぶ?

歌舞伎の立廻りを観たいという方は、
江戸時代以前の武士や公家の生活を
描いた時代物の作品を選びましょう。

時代物の作品には、
日本刀が多く使われています。
はしごや網を使ったり、
斜めになった屋根の上で行う立廻りは、
観客に大人気のシーンです。

しかし、実は時代物だけでなく、
舞踊的要素が強い所作事の作品でも
所作ダテという殺陣を
観ることができるのです。

この所作ダテは、
時代物の立廻り以上に
スローペースで華やかな音楽に
合わせて踊るように行われます。

規則正しいリズムで演じられる
所作ダテは、美しすぎて
一見、戦闘シーンに
見えないこともありますが、
事前に上演作品のストーリーを
把握しておくと、
目の前の所作ダテと想像力が相まって
あなただけの戦闘シーンが
見えてくるんだそう
です…

時代物や所作事の作品がわからない
という方は、こちらの記事が参考になります!
いつかは観たい!歌舞伎の有名な演目紹介

まとめ

テレビや映画で見る時代劇の
殺陣シーンとは異なり、
歌舞伎ならではの優雅でダイナミックな
立廻りは、是非、間近で見てみたいものです!

時代物と所作事の作品を観て
それぞれの殺陣を比べてみては
いかがでしょうか。