荒事って何のこと?東西で異なる歌舞伎の演技とは

荒事って何のこと?東西で異なる歌舞伎の演技とは

歌舞伎の象徴である
隈取や見得ですが、
実は、どんな作品でも見られる
というわけではなかったんです!

今回は、歌舞伎初心者必見!
歌舞伎メイクや見得を楽しめる
「荒事」について紹介します。

演目を適当に選んでしまって
隈取や見得が見られなかった…
なんてことがないように、
是非、こちらの記事を最後まで
読んでいって下さい!

荒事(あらごと)って何?

そもそも荒事とは、
歌舞伎の特殊な演技演出の1つで、
超人的な主人公が

  • 見得(みえ)
  • 六方(ろっぽう)
  • 隈取(くまどり)
  • かつら
  • 衣装
  • 小道具

などを用いて、
荒々しく誇張的に演じます。


初代 市川 團十郎さんが
14歳のときに、金平浄瑠璃に
影響を受けて全身を赤く塗り、隈取をとって、
荒事の元となる豪快な演技をしたのが
始まりだと言われています。

その後、二代目 市川 團十郎さんが
荒事の技法を完成させ、
市川宗家(成田屋)の礎となったのです。

また、慣用句「十八番(おはこ)
の元になったと言われている
「歌舞伎十八番」は、
七代目 市川 團十郎さんが
息子に名前を継がせる際に、
歴代の團十郎が得意とした
荒事18の演目を継承したものが
後に「歌舞伎十八番」と
呼ばれるようになったものなんだとか。

荒事の成立はいつ?

出雲阿国が「かぶき踊り」を
披露したおよそ100年後、
江戸や上方などの大都市が
形成されていきました。

現在の東京や
大阪・京都付近の地域です。

大都市が創られると
町人による文芸や美術などの
文化が盛んになり、
その過程で歌舞伎も発展を遂げました。

現在の東京は、
各地からいろんな人が集まり、
毎日賑わいでいますが
当時の江戸もそうでした。

そんな江戸では、
豪快で活気のある歌舞伎
好まれていて、
その流れを汲んで生まれた
歌舞伎の表現様式が
荒事だったのです。

江戸の荒事と上方の和事

歌舞伎の世界では、
「江戸の荒事」「上方の和事」
という言葉があります。

和事(わごと)とは、
江戸で荒事が生まれたころ、
上方(京・大阪)で生まれた
柔らかく優美な演技法のことです。

江戸で、荒々しく豪快な演技が
好まれていたのとは対照に
古くから都が置かれ、
文化や芸術に長い歴史を持つ上方では
洗練された演技が好まれていたのです。


和事の演目では、
元々は高貴な身分でしたが
なんらかの理由で
落ちぶれてしまった色男が、
遊女に恋をする…
というような恋愛系の
お話が多いようです。

また、和事の立役は
遊び呆ける弱々しい男で、
言い方を変えると、
柔らかみのある繊細な役柄。

そして、この落ちぶれた色男を
写実的で自然に演じ、
当時、人気を得たのが
初代 坂田 藤十郎さんでした。

現在も、和事の技法は
上方歌舞伎の芸風として
引き継がれています。

関東地方と関西地方、
それぞれの歌舞伎

見比べてみるのも
面白いかもしれませんね。

これは観たい!荒事の代表作

ここで、荒事の典型と言える作品を
いくつか紹介します。

歌舞伎初心者でも楽しめる
代表的な作品ですので、
是非、初めての歌舞伎鑑賞の
参考にしてみて下さい。

①暫(しばらく)

主人公の鎌倉 権五郎が、
罪なき人々を悪役から救うという、
ヒーロー物の元祖とも言える作品です。

権五郎の登場シーンでは
「しーばーらーくー!」という大音声が流れ、
花道で「つらね(長セリフ)」を披露する
という流れが、見どころの1つです。

②鳴神(なるかみ)

朝廷が約束を破ったことに腹を立てた
鳴神上人が、竜神を壺に閉じ込めて
雨を降らせなくしてしまった。

そこで、鳴神上人のもとに来た
美女・雲の絶間姫は、色仕掛けで
竜神の封印を解く術を聞き出そうとする…

というストーリーです。
雲の絶え間姫に騙されたことを
知ったときの鳴神上人が、
怒りに荒れる姿が見ものです!

③国性爺合戦(こくせんやかっせん)

中国・唐土の忠臣であった父と
日本人の母の間に生まれた
和藤内(わとうない)が主人公です。

父の祖国である明国の危機を知り、
親子3人で国を復興するため
唐土に向かう、冒険ストーリー。

作者の近松門左衛門は
「日本のシェークスピア」と呼ばれるほど
現代にも大きな影響を与えています!

まとめ

今回は、江戸で発展した
歌舞伎の演技技法である
「荒事」について紹介しました。

荒事では、どの演目も
豪快な衣装や小道具、
さらにその演技は迫力満載

見ごたえたっぷりですので
初めての歌舞伎鑑賞に
ぴったりではないでしょうか。

是非、お気に入りの作品を
見つけてみて下さいね。